夏合宿の事件簿(後編) by松井
第3章 探れ!飛び出せ!美波町!
2次会への片道切符事件やナニワのゴキブリ深夜の奇声事件などで、
よく眠れなかったメンバーもいる中、一行は美波町の宿舎で朝を迎えた。
(美波町での宿舎はなんとこの日和佐城!の裏!)
ここからは、
「美波町に若者を呼び込むためには」
というテーマで最終日に提言プレゼンをするためのフィールドワークが主になる。
まずはじめに、吉田さんの地方創生レクチャーを拝聴した。
吉田さんの経営する「あわえ」では美波町の振興のためにさまざまな取り組みをしており、それらをご紹介いただくことで、これからフィールドワークに繰り出す前に効果的なインプットができた時間であった。
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そんな取り組みは綺麗事だろうと訝しんだ松井は、舌鋒鋭く吉田さんに噛み付くも、
あえなく返り討ちに遭うのであった。(松井恥晒し事件)
「地方創生」において非常に素晴らしい取り組みをしているので、
繰り返しになるがぜひとも「美波町」や「あわえ」で検索してみてほしい。
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続いて地元食材を使ったレストラン、odoriでランチをいただいた。
(地鶏の「阿波尾鶏」のステーキ)
ロードサイドという立地ではあるが駐車場には他県のナンバーも多く、
平日にもかかわらず店内は多くの客で賑わっていた。
ここまで上手く「地元食材」をブランディングできている事例も珍しいだろう。
実はこのodoriも、「あわえ」の経営する店舗の一つである。
美波町の地域ブランディングはこの会社が担っていると言っても過言ではない。
(地域ブランディングや町おこしといえば、最近は「JTBプロモーション」といった企業も登場しており、今注目の領域である。)
午後はまず、地元のボランティアガイドの方による日和佐ツアーがあり、
その後宿舎に戻って美波町町長、南部県民局局長による講演。
何度も繰り返すが、
たかが学生の合宿に地方自治体の首長が歓迎会に参加したり、講演したりする
などということはあり得ないことである。
このように住民全体が一丸となって自分たちの住む町を盛り上げようとしたり、
外部の人間に対するおもてなしの精神を持っていたりすることが、
美波町の最大の強みだったりするのかもしれない。
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ボランティアガイドの方は基本的にすでにリタイアした世代なのだが、
「地方創生のゲストを受け入れる度に無償でガイドをしているのだが、
その人たちの提案によって私たちに直接利益がもたらされたことは一度もない」
とこぼしていたのもまた事実である。
地方に若者を呼び込もうという取り組みがすなわち地方創生だが、
地方においては間違いなく高齢者が多数派である。
来る側と迎える側、両方がハッピーになる施策
というのが絶対条件であり、最も難しい部分である。
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この日はさらにワークが続き、最終日のプレゼンに向けた中間発表や
翌日のインタビュー準備を終えてから、私を含む一部メンバーは温泉へ。
海の見える露天風呂が売りの「白い灯台温泉」のはずだったが、
真っ暗すぎて海見えない事件で少し気を落とすことに……
気を取り直して吉田さんがほぼ毎日飲んでいる「つくし」へうかがった。
ちょうど東京からプロデュース系のお仕事をされている方がおり、
地方創生に限らずいち学生としてキャリアの話などに花を咲かせる時間となった。
しかしお店からの帰りのタクシーで、事件は起こる。
松井「運転手さんは地元の方ですか?」
運転手「いや、九州からの移住組さ」
松「わざわざ美波町に移住してきた方の方がこの町に愛着があるって話を聞きました。やっぱり運転手さんもこの町は好きですか?」
運「君たち学生? こんな町、何も見る所ないでしょ。私は家も建てちゃったし今更どこへも行けないけど、娘は去年町を出て行ったし、周りの若い人はみんな外への移住を考えてる。どうせ君たちも冷やかしに来たんだろう?」
ここまで会った美波町の方はみんな町のことが大好きだっただけに、衝撃だった。
私は何も答えることができなかった。
運転手の言う通り、私は移住の検討に来たわけではないどころか、
コンビニもない、虫が出るような田舎に住むなんて全くごめんだと考えていたからだ。
さなえ暴走事件などもあり複雑な気持ちで床に就き、迎えた4日目。
この日のメインは、グループごとの地元企業訪問。
1社目:株式会社鈴木商店、美波町サテライトオフィス、美雲屋。
2社目:居酒屋つくし
(あ、2枚目は昼飯で行ったひわさ屋の岩牡蠣定食です)
ウェットスーツで登場事件だけでなく、
あわでんふとももパツパツ事件や
あわでん目逝ってる事件などがあったが、
お話を伺う中で分かってきたこともあった。
・町の人たちはみんな年1回の秋祭りを楽しみに生きていること
・移住者の多くは美波町のどこが好きなのかを自分で見つけていること
・美波町の生活は「無償の役割」としての「つとめ」と共にあること
明日の最終プレゼンのためにこれらの発見を持ち帰り、
この日は宿舎でBBQ(2日ぶり2回目)があった。(画像割愛)
漁師さんが獲ってきた魚や地元の野菜などを炭火で焼き、
一行は最後の晩餐を楽しんだ…後も、翌日のプレゼンのために徹夜である。
誰だこんなタイムスケジュールにした奴は。
張本人「ん~、もう疲れたよぅ~~」
みな眠い目をこすりながら明日に向けて最後の調整をする中、夜は更けていった…
終章 地方創生、光と闇
翌朝、いよいよ最終プレゼン。集まったのは美波町の「偉い人」(前編参照)たち。
各チーム、それぞれが練り上げたプランを発表した。
あまや!それマイクじゃないよ!事件などもあったが、
発表したプランは概ね好評であったとのこと。
若者の意見は長年住む住民に新たな視点を与え、今後の参考になるということだった。
他人事のような言い方になってしまったが、
私と雨夜はプレゼンを終えてすぐに私用で神戸に戻っていたのである。無念。
(なお、雨夜はこの後大きな事件を起こすことになるのだが、それはまた別のお話。)
3日間お世話になった美波町に別れを告げ、私は帰路についた。
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最後に、そんな私にしか綴れないことを示しておこうと思う。
汽車(徳島の鉄道は全てディーゼルエンジンの汽車)で徳島駅にむかう途中、
多くのローカル駅を通過し、自然豊かな車窓の風景を見ながらの帰路であった。
「自然豊か」と表現こそしたが、いわゆる「限界集落」を直接目の当たりにしたのだ。
同じ地方といえども、美波町日和佐がどれほど恵まれていたのか、私は痛感した。
汽車の窓から見えない山の向こう側にも、もし同じような集落があるとしたら?
「地方創生」と言っても、もとよりそんな体力も残っていない集落は?
どこにどれだけの若者が移住したら、「地方創生」は成功といえるのか?
本を読んで行っても、実際に町を見てみても、
私はその答えを得ることはできなかった。
前後編を通して、課題をとっ散らかすだけの記事になってしまったが、
たくさんの気付きと地方でリアルに起こっている事件を認識した夏合宿であった。
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夏合宿の事件簿 完